設立趣意書
日本に住むわたしたちブラジル人には課題がある。その課題を解決するため、四つの目標を掲げ、労働者協同組合を設立する。
わたしたちは、雇用や社会保障などの面において不安定であり、生涯を通して生活への不安がある。そこで、自ら起業することで、安定的な就業の実現を図り、より豊かに人間らしく生きられるようになることを一つめの目標とする。
わたしたちは、コミュニティ通訳をしている。いくら機械翻訳の技術が進んでも、コミュニティの特性や独特の文化、言語を踏まえた通訳は、人にしかできない。しかし、日本人が行う通訳者養成講座の内容では、こうした通訳者を養成することが難しく、日本語による説明では理解が困難な場合がある。そこで、自分たちで養成講座を行うことにより、コミュニティにとって、より有益な通訳者の養成を行うとともに、通訳者の質の向上を図ることを二つめの目標とする。
わたしたちは、日本社会で主体性を奪われてきたと同時に、そのことに甘んじてきたが、こうした状況を変えたいと考えている。わたしたちが主体的に事業に取り組む姿を日本社会に示すことによって、社会的地位の向上を図るとともに、ブラジル人だけでなく、ルーツを超えて、あらゆる人たちが日本社会で主体性を持って生きるインセンティブになることを三つめの目標とする。
わたしたちが日本で暮らしやすくなるためには、日本の文化や習慣を知るとともに、日本人との接し方を知る必要がある。そこで、わたしたちは、通訳にとどまらず、相互の文化を仲介する「文化メディエーター」の役割も果たしていきたい。そして、ルーツを超えた異文化間の架け橋となり、交流や相互理解を促すことにより、多文化共生社会の実現をめざすことを四つめの目標とする。
これら以外にも、わたしたちには様々な課題がある。働き盛りで来日した人たちは高齢化してきているし、子どもたちへの教育はいまだに不十分である。また、地域コミュニティの力が弱く、災害時での対応が不安である。これらの課題に対して、設立時に全て対応することは難しいが、上記の通訳・養成・文化仲介といった取り組みを基盤に、関連する事業として段階的に展開していくことで対応していくことが可能である。
以上の目標を実現させるため、起こそうとする事業や組織運営に全員が平等の権利を持つだけでなく、構成員全員が主体的に関わり合い、出資、経営、労働に全員がしっかりと責任を引き受けることを基本とした労働者協同組合の法人格を取得することとし、「CooperAtiva Tuyaku 労働者協同組合」を設立する。
理事プロフィール

理事長(Presidente)
大島 ヴィルジニア・ユミ(Virginia Yumi Oshima)
デカセギ労働者から、日本の公共サービス分野で信頼される存在へ。
日系ブラジル人三世。来日35年。病院、警察、検察、法律相談、学校、市役所などで32年以上にわたり通訳・相談支援に従事し、多くの外国人が権利や情報、必要な行政サービスにつながるための支援を行ってきた。現在は、CooperAtiva Tsuyaku 労働者協同組合の創設メンバーの一人であり、代表理事を務める。
・多文化ソーシャルワーカー認定(愛知県)
・多文化共生マネージャー (JIAM全国市町村国際文化研修所&CLAIR自治体国際化協会)
・災害時外国人支援情報コーディネーター(総務省)

副理事長(Vice-Presidente)
登田 アンナ 恵美子(Ana Emiko Toda)
1991年に来日した日系ブラジル人。ゴルフ場のキャディからキャリアをスタートし、人材派遣会社で通訳を経て、現在は行政機関にて外国人相談員および通訳として活躍するなど、在日ブラジル人コミュニティの発展と歩みを共にした堅実なキャリアを築く。
2008年の世界金融危機(リーマンショック)を契機に、多文化共生への使命に目覚める。以来、そのビジョンを行動に移し、外国人住民と日本社会をつなぐ架け橋として、地域社会への定住支援や統合を促進する様々な活動を精力的に牽引。高いレジリエンス(適応力)と戦略的視点を併せ持ち、真のインクルージョンとバリアフリーなコミュニケーションを追求する組織にとって、不可欠な存在である。CooperAtiva Tsuyaku労働者協同組合 共同設立者。

副理事長(Vice-Presidente)
古屋 ルジア(Luzia Furuya)
「私が通訳の道を選んだ理由」
1990年、2歳にも満たない娘を育てるシングルマザーとして来日した。当時、多くのブラジル人と同じように、言葉も文化も異なる日本で新しい生活を築くことから私の歩みが始まった。
来日後は自動車部品工場で13年間勤務し、その後、外国人支援事務所、病院、小学校、市役所、福祉分野などで通訳・翻訳業務に携わってきた。さまざまな現場での経験を通して、日本で暮らすブラジル人が抱える課題や思いを深く理解するようになった。
しかし、私の人生を大きく変えたのは、自身の体験だった。
娘が4歳になる頃になって初めて、本来受けることができた児童手当の存在を知った。当時は日本語や制度について十分な知識がなく、大切な情報にたどり着くことができなかったのである。
その経験を通して、言葉や情報へのアクセスが、一人ひとりの生活や人生に大きな影響を与えることを実感した。
この出来事が、「同じ思いをする人を一人でも減らしたい」という私の使命の原点となった。
現在は、CooperAtiva Tsuyaku 労働者協同組合の副理事長として、誠実さ、正確さ、そして責任感を大切にしながら、一つひとつの通訳・翻訳に真摯に向き合っている。
私にとって通訳とは、言葉を訳すだけではない。相手の背景や思いを理解し、その言葉を誠実に、責任を持って伝えることである。その積み重ねが、人と人との信頼を育み、文化と文化をつなぐ架け橋になると信じている。
これからも、一人ひとりに寄り添いながら、外国人住民と地域社会を結び、誰もが安心して暮らせる多文化共生社会の実現に貢献していきたい。

副理事長(Vice-Presidente)
江洲 明美(Akemi Essu)
20年以上にわたり日本企業での実務経験を積み、人事、医療・不動産通訳・翻訳、日本語教育など幅広い分野で活動してきた。日本の礼儀作法やビジネスマナーについても継続的に学び、その知識を地域活動や社会貢献に活かしている。
<主な経験>
医療・不動産通訳・翻訳 日本語講師 日本企業での人事業務
東京2020パラリンピック通訳(ブラインドサッカー・パラ卓球) Projeto Koema 創設者
<出版・社会活動>
医療用語辞典・『医療通訳の仕事』制作協力 『Mulheres Extraordinárias』第9版 共著
Mulheres do Brasil 東海支部 メンバー 長寿委員会 リーダー NPO ABT 理事 CooperAtiva Tsuyaku労働者協同組合 共同設立者

理事(Diretora)
神田 すみれ(Sumire Watanabe Kanda)
コミュニティ通訳者として行政・教育・医療・司法の現場で活動。多文化ソーシャルワーカー認定(愛知県)
<主な実績>
【コミュニティ通訳】愛知労働局外国人雇用サービスセンター 英語通訳(2011年〜2020年)、名古屋国際センター外国人法律相談通訳・英語/中国語(2008年〜2022年)、名古屋市中保健所にじいろサロン中国語通訳(2013年〜2026年)、愛知県弁護士会登録通訳人
【相談員・アドバイザー】愛知労働局外国人雇用サービスセンター外国人雇用管理アドバイザー、犬山市役所外国人相談員 など
【研修講師】犬山市、小牧市、名古屋市、江南市、大阪府、奈良市等でのコミュニティ通訳講座講師多数
<現在>
愛知県あいち多文化共生推進会議委員 犬山市多文化共生推進会議委員 瀬戸市基本構想審議会委員 日本協同組合学会常任理事 愛知県立大学人間発達学研究科・多文化共生研究所 客員共同研究員 NPO法人地域と協同の研究センター 研究員 CooperAtiva Tsuyaku労働者協同組合 共同設立者

理事(Diretor)
大橋 充人(Michito Ohashi)
愛知県職員として多様な行政分野に携わる中、多文化共生推進室に配属され、「あいち医療通訳システム」の立ち上げ(2011年4月から本格スタート)において、通訳養成研修のカリキュラム作成やシステム構築を主導するなど中心的な役割を担った。一方、研究者としては、在日ムスリムの生活実態や宗教的配慮に関する研究を進めるとともに、愛知県におけるコミュニティ通訳の実態調査を取りまとめた。CooperAtiva Tsuyaku労働者協同組合 共同設立者。
<経歴>
愛知県職員(1990年4月~2026年3月) 愛知県立大学 多文化共生研究所 客員共同研究員(2021年4月~) 北名古屋市国際交流協会 事務局長(2026年4月~) 多様性憲章及び社会統合講習に関する研究会 事務局長(2026年4月~)
<出版等>
単著『在日ムスリムの声を聴く ― 本当に必要な“配慮”とは何か』晃洋書房、2021年
共著「愛知県におけるコミュニティ通訳に関する実態調査」『共生の文化研究』17号、7–81、2023年
私たちのやりたいこと
私たちは、1及び2を主としつつ、3以下に掲げることもやっていきたいと考えています。
1 通訳・翻訳に関すること
2 文化メディエーター(異文化仲介)に関すること
3 情報発信に関すること
4 相談に関すること
5 高齢者支援に関すること
6 介護及び福祉サービスに関すること
7 障害児及び特別な支援を必要とする児童に関すること
8 教育及び学習支援に関すること
9 地域コミュニティの支援及び活性化に関すること
10 健康及び医療支援に関すること
11 防災及び災害支援に関すること
12 就労支援及び人材育成に関すること
13 スポーツ及び文化活動の推進に関すること
14 外国人コミュニティのスキルアップに関すること
15 団体・組織の設立及び運営支援に関すること など


